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ワインの異臭「ブショネ」

日頃からよくワインを飲む人なら感じた経験もあるかもしれない”ワインの変質”
一口に変質や劣化と言ってもいろいろあるのですが
ワイン好きの人なら「ブショネ」という言葉、耳にしたことがあるかもしれませんね。
しかしその定義や状態はよく知らない という人は意外と多いもの。
実際に「ブショネに出会ったことがある」とはっきり言えるの人は少ないのではないでしょうか?
今日はそんなブショネについてのお話です。
ブショネって何??
一般の人は聞いたこともなく、ワイン好きも名前は分かるけど酸化とどう違うか説明できないブショネ。私も改めて調べてみました。

ブショネ(Bouchonne-語源はフランス語のBouchon=コルクなど瓶口を塞ぐ栓から来ています)とは、「バクテリアに汚染された状態のワイン」のことを指し、通常コルクの汚染が原因とされています。
なるほど・・・ほかのサイトもいくつか見て、分かったこと。
コルク栓業者はもちろん厳しい衛生管理のもとコルク栓を製造しているわけですが、それでも元をたどれば自然の木が原料ですから、バクテリアを完全には防ぐことは非常に難しいと言うのが現状のようです。
ヴァンナチュよりちょっと訂正
あいさんが言うように書いているサイトも沢山あるのですが、ブショネはバクテリア(=細菌)に汚染されているのではありません。
ブショネの原因は分かっていてTCA(2,4,6-トリクロロアニソール( 2,4,6-Trichloroanisole))という有機塩素化合物です。
よくコルク汚染と言いますが、スクリューキャップでもブショネが起きる可能性があり、原因は殺菌などの際の塩素と微生物によって発生すると言われています。
ブショネしたワインの異臭とは??
ほんの少しカビっぽいコルクの臭いがついたのもから、とても飲めないと顔を背けてしまうものまでその程度も様々。
匂いを表現するのは難しいですが、ブショネの臭いの表現としてあげられるものを集めてみました。
<ブショネに表現される臭い>
- カビっぽい
- ホコリっぽい臭い
- 陰干しした雑巾の臭い
- 濡れたボール紙臭
- 古い地下室のような臭い
考えただけでがっかりしますね。
そしてもちろん、ブショネはコルク栓だけでなくワインの汚染でもありますから当然味にも影響を与えていきます。

<ブショネに表現される味>
- 苦味がある
- 味が単調
- 腐ったような風味
実はブショネだからといって人体に影響はありません。
頑張れば飲めます(苦笑)
しかしそれは本来のワインの味と香りからは離れたものになっていますから、もはや価値を失ってしまったもの同然なのです。

ブショネは避けられるのか
一般の消費者がワインを購入する場合にブショネを避けることができるのか。
これは非常に難しい問題で、一言で言ってしまえばNOです。
一般の消費者に限らずソムリエであっても、開栓前にブショネを見極め避けることはできないのです。
お話ししてきた通りブショネは管理状態は関係なく、開けなければわからないもの。
完璧な環境下で保存していたとしても起きてしまうこともあるのです。
ブショネ率は意外と高い
私たちだけでなく生産者もがっかりさせる厄介なブショネですが、その発生率は意外と高く程度の軽いものも含めると7パーセント前後と言われています。
ブショネは全てのワインから均等に出るというわけではありません。
質の悪いコルクからはブショネが出やすくなりますからブショネ率の高い銘柄。というのも存在するのだそうです。
ヴァンナチュよりちょっと訂正
質の悪いコルクと言うと語弊があるかもしれません。殺菌の際の塩素が残留しているもの・・・これはコルクの殺菌だけでなく、例えば醸造所の殺菌が原因のこともあります。
ただ、ブショネ率の高いものはあります。要はコルクが次々と打たれていくわけですから、TCA残留のあるコルクは飛び飛びではなく並んでいることのほうがありそうですよね!
私も1ケースのうち半分近くがブショネだったこともあります(>_<)
コルク栓の代用でブショネを減らす
消費者の努力では減らすことができないブショネですが、現在ではスクリューキャップなどコルク栓の代用品を使用するワイナリーも増えてきましたからブショネの数は減ってきていると言われています。
<コルク以外の栓>
- スクリューキャップ
- 合成コルク(主にシリコン!)
- 王冠キャップ
合成コルクには低コストで製造できる上に天然のコルクと同じ特性を持ちますが、その効果は残念ながら短期間。
合成コルクの弾力性は長続きしないのです。
熟成させず若いうちに飲むワイン(一年ぐらい)の栓としては大活躍ですね。
スクリューキャップもなかなか優秀。
気温の変化による劣化にも強くなるというから驚きです。
しかしなんとも安っぽいという消費者の意識は依然として強いもの。
スクリューキャップではワインが熟成しにくいなどの問題もありますが、一番の普及の妨げはコルクを使っている。ということそのものの価値が高いこと。
確かに、オープナーで開ける楽しみがなくなるのは惜しいですよね。。難しい。
ヒューゲルの功績

2016年に亡くなったアルザスの巨匠エティエンヌ・ヒューゲルは、ブショネ対策にかなりの労力をかけ、ディアムコルク(チュラルコルクから特殊な方法で150以上の物質を除去し、TCAに関してはほぼゼロにしているコルク)を使用するようになりブショネは完全になくなったと言っていました。
実際、Full Circle Wine Solutions(サンフランシスコを拠点に、世界的にワイン・スピリッツの教育活動を行う会社)とマスターソムリエであるEvan Goldstein氏による2013年の研究では、DIAMコルク、ナチュラルコルク、人工コルク、ガラス栓、スクリューキャップのうち、DIAMコルクの優位性が確認されたようです。
ブショネに出会ってしまったら
ブショネに出会ってしまったらどうしたらいいのでしょうか?
”ブショネは自然に存在するもの”という扱いで返品や交換を断っているショップもありますが、交換を受け付けているショップもあります。
ちなみにフランスでは原則として交換してくれます。(もちろん購入して間もない場合に限る)
日本での”交換してくれない店”を否定するつもりはありませんが、フランスでは”ブショネで交換”は当たり前の権利として認識されているのです。
それでもまた飲みたくなるワイン
さて、今回はブショネについてお話ししてきましたが、いかがでしたか?
ブショネといってもその判別は非常に難しく、気づかず飲んでいることも多いようです。
テイスティングがメインの場では味や香りが全てかもしれませんが
普段のワインのある風景というのは 美味しい料理や楽しい会話、そういった楽しい空気が中心ではないでしょうか。
ワインを台無しにしてしまうブショネですから異変を感じたらもちろんそれはストップすべきだと思います。
しかしそうでなければいつまでも眉間にしわを寄せて探っているのも勿体無いというもの。
こればかりは運のようなところもありますから、もしその一本がブショネだったとしてもいつまでもがっかりせずまた新たな出会いへと踏み出しましょう。
ワインで楽しい時間を過ごしてくださいね。

だって、ワイン好きな人って、これまで100回どころでなくワインを飲んでいるはずですが、ブショネと思ったことなんて7回どころか1回もない人がほとんどだと思います。
でも、あいさんが最後に書いている「ワインで楽しい時間を過ごしてくださいね。」のためには、そのほうが幸せなのです。
私はブショネに敏感になったばかりに、周りが美味しいと言っているワインが臭くて飲めないのです。。。
ヴァンナチュのつぶやきコラム~ブショネ編~
ブショネの臭いを嗅ぎ分けることはソムリエにとっても 非常に難しいことです。
ソムリエの資格を持っていても分からない人は多いのです。
10年ほど前、ブショネ率は10%前後と言われていました。
当時勤めていたレストランでブショネの処理をどうするか酒屋さんと決めることになったのですが、酒屋さんは返品で良いとのことでした。
しかし、いざ営業が始まると、その酒屋さんからこの店だけなんでこんなにブショネが多いんだと尋ねられました。
当時ワインがよく出る店にいましたが、私以外がワインをサービスすることもありますし、店全体でのブショネ率は1,2%だった覚えがあります。
月に2本くらいのブショネです。しかし酒屋さんいわく他の店では全くないと。
推測するにブショネでも気づかずに飲んでいたのでしょう。
何度も言ったように、ソムリエの目(鼻?)から見てもブショネの臭いをきちんと認識して判断できるようになるにはかなりの経験が必要だと思っています。